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あの女、絶対おかしい。
「俺からすれば、毎朝面倒がらずに旦那の弁当用意してくれる健気な奥さんのこと、『おかしい』とか言ってる小池さんがおかしいっすけどねー」
辛辣な言葉を吐き、社員食堂で最もボリュームのあるカツ丼定食を吸い込んでいく若者は、俺の後輩の高城恭弥。
対して、俺が食うのは、今朝うっかり忘れそうになった弁当。つくね、きんぴらごぼう、ほうれん草のお浸しと、味付けも含めて俺の好きなおかずばかり。
「それでー? 弁当に旦那の好物ばっか揃えてくれる奥さんの、一体何がおかしいんです?」
「……今朝、マンションのエントランスで小学生の女の子にぶつかったんだ。その拍子にその子が尻餅ついたから、謝罪がてら手を貸そうとした」
「ほうほう。それで?」
「そしたら弁当持ったアイツが間に割り込んできて、『これ忘れたでしょっ!』って……」
「うーわっ! 小池さん、弁当作ってもらっときながら置き忘れてたんすかっ!? ひっでー旦那っ!」
「しょうがねぇだろっ! アイツが朝からしつこく絡んできやがるからっ……っつか話はそこじゃねぇっ」
話が進まないことに苛立ち、俺は拳をテーブルに叩きつける。
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