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「あの女、俺が小学生に手を貸すことにすら危機感持つんだぞ? さすがに異常だろっ」
「……小池さん。それ自慢すか?」
「あ?」
「要するに、『俺が他の女とちょっと手が触れただけで奥さん妬いちゃうんだぜー。可愛いだろー』って言いてーんでしょ!? 自慢じゃねーですかっ!」
「どこがだよっ! 小学生相手にだぞ? ガキまで警戒対象にされたら面倒くせーわっ!」
まただ。高城に愚痴ればいつもこう。独身の高城は結婚生活に高尚な憧れでもあるのか、何故かいつも妻の肩を持つ。
「でも不思議っすよねぇ……」
本当に不思議そうな表情をする高城が、箸を止めた。
「奥さん、何でそこまで小池さんに入れ込んでるんすかねー? 言葉選ばねーでぶっちゃけると、小池さんって顔もスタイルもフッツーだし、社内での活躍ったって微々たるもんで、稼ぎだってそう大したことねーだろーに」
「本当に言葉選ばねーな! 先輩相手にそこまで容赦ないこと言えるお前こそ不思議だわっ!」
「お、小池。高城。まーた小池の奥さんの話してんのかー?」
ヒートアップしかけていた会話に、麺汁の匂いと陽気な声が加わる。
「古森さん……」
「小池のココに皺が寄ってる時は、大抵奥さんの話をしてる時だよな」
明るい笑顔で眉間をトントンつつくのは、上司の古森啓一さん。その片手には、本日の昼食を乗せているだろうトレイ。
「天音ちゃん、いい奥さんじゃないか。うちの彩愛もなついてるし」
古森さんは、階はかけ離れているが、俺と同じマンションの住人だ。娘さんが二人おり、子どもが好きなうちの妻とは、いつの間にか友のような仲になっている。
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