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「子どもに好かれるのは才能なんだぞ? 俺なんかなぁ……実はここ数年、蝶子……上の娘から距離を置かれてるんだ」
はぁ、とがっくり肩を落としつつ、ちゃっかり俺の横の席に腰を落ち着ける古森さん。
「昔から物静かで、感情を大袈裟に表に出す子じゃなかったんだけど、誕生日を迎えるごとに口数が減ってきてな……」
「あー……思春期の女の子の、お父さんに対する恥ずかしさ、的な?」
「そうだといいんだけど……やっぱり再婚するタイミングが早かったのかなぁ……」
「蝶子ちゃん、まだ中学生でしたよね? ちょーっと早すぎたかもしれないすねー。再婚の時期も、今の奥さんとの子作りもー」
「ああーっ……母親とか姉妹とかいた方が、蝶子も安心すると思ったんだけどなぁ……」
いつの間にか古森さんに話題を横取りされており、カツ丼を食う手を止めない高城が軽い調子で受け答えする。
子どもがいたらいたで、悩みの種も増えるのか。俺には無縁な話だが。
まだ消化されていないモノが、急に込み上げてきそうになる。
古森さんの弱音と、それに付き合ってやる高城の相槌を受け流して、俺は黙々とおかずを胃に流し込む。
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