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くふふっ。朝から眼福だわ。
味噌汁茶碗に口をつける時も、背筋をピシッと伸ばしたままなの。毎朝私にご飯食べるのを忘れさせちゃうこの人は、味噌汁を吸う姿が世界一カッコいいこの人は、私の愛しい旦那さん。
「おい」
「なぁに? 大地君」
「ソレは何だ?」
「スマホだけど?」
私の作った朝食を、毎朝綺麗な姿勢で食べてくれる夫。その麗しい姿を保存しておこうと、私はスマホを構えた。
「撮ってもいーい?」
「いいぞ。離婚届けに実印押すならな」
「諦めまーす……」
私を黙らせたい時、夫は必ず“離婚”という伝家の宝刀を抜く。その地獄だけはどうしても避けたい私に拒否権はない。
「だ・い・ち・君っ。ネクタイ結んであげよっか?」
「自分で結べる」
「そう? あ、じゃあ袖を通しやすいように、背広持っててあげるね」
「一人で着れる」
「えー。じゃあ靴を履くお手伝いでも……」
「俺は小学生でもお坊っちゃんでもねーんだよっ!! ほっとけっ!」
最後には叫んで素早く身支度を済ませた夫は、『行ってきます』もないまま早々と家を出た。
「あーあ、行っちゃった……」
夫が出勤しちゃうこの時間が、いつも憎らしい。
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