39歳で青春するのはダメですか

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しばらく沈黙が続いた。俯きながら話そうかどうか迷っているのだろうか。その姿を見ているうちに、自分の探究心だけ優先させて、香織を追い詰めている事に気づいた。 「よし!もう遅いし寝ようか」 最低だ俺は。知りたい知りたい・・そこに優しさはあると言うのか。もし自分が答えにくい質問をされたら逃げ出すだろう?香織はそれをしなかった。 もう十分だ。 「ちゃんと・・いつか・・話します」 そう言うと香織は部屋を出て行った。 泣いていただろう。後を追うべきか。 だがそうしたのは俺だ。傷つけたのは俺だ。 「何やってんだ俺・・」 つくづく思う。俺は人と接するべきではない。 相手の気持ちに立つ事をせず、空気を読む事を しようとしない。最低限必要なコミュニケーションスキルが備わっていないのだ。 頭痛がするほどに自己嫌悪に苛まれる。 こういう時は決まって両眼の奥が痛む。 何度繰り返せばいいのだろう。 「逃げちゃった・・」 香織は自分の部屋のドアを勢いよく開け、滑り込むように入り、また勢いよくドアを閉めもたれかかった。 「ダメだなぁわたし」 雄大さんになら話ても良かったと思う。 これまで誰にも話そうなんて思わなかったのに不思議だった。 それでも逃げてしまったのは、やっぱりまだ怖かった。嫌われる。きっと。汚い女だと思われる。 「明日ちゃんと謝ろ・・」 シャワーを浴びながら嫌なことを思い出していた。 心の奥底に閉まってある記憶。思い出したくなくても突然脳裏をよぎり、そのたびに暗い海の底へ沈んでしまう。 いつか忘れられるだろうか。 それとも忘れちゃいけないんだろうか。 私だけ過去を捨てて逃げていいんだろうか。 こんな思い、何度繰り返せばいいんだろう。 ピンポーン ん・・だれ?こんな時間に・・ インターホンカメラには雄大が写っていた。 「ゆ、雄大さん!?どうしたんです??」 びっくりした。すっぴんのまま、パジャマのままだけど。それより昨日の事があった矢先だし、もしかして怒ってるんじゃ・・ 「寝てたよな。ごめんね。気晴らしに映画とかどうかなって・・」 映画!?今から?? まだ朝9時だよ!? 「え、映画ですか!ちょっとだけ待ってください! 急いで用意します!」 びっくりした。まさか雄大さんから誘ってくるなんて。とにかく急がなきゃ!待たせちゃう!
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