39歳で青春するのはダメですか

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昼間はあれから大変だった。 嫉妬で怒り狂う香織を宥めるのもそうだが、 途中で玲奈ちゃんが突然やってきて 「ぶち殺すー!って聞こえて飛んできたんです!」 と全く動じてない様子で部屋に飛び込んできたもんだから・・ほんとに殺人事件現場になるところだった。 にしても香織がまさかあんな豹変するとは。 裏表が無い子だと思っていたが・・裏側に狂気を秘めていた。やはり人は見かけによらぬものだ。 まだ香織には俺が知らない部分がたくさんある。 そりゃそうだ。まだ出会って1か月も経っていないのだ。 一緒にいた時間の長さが全てではないとしても。 長ければ長いだけ見えてくる事もあろう。 でも不思議と嫌いだと思ったり、引いたりした 訳ではなかった。 あそこまで嫉妬するのは、俺のことを少なくとも嫌いではないだろう。むしろ好きでなければ、殺人を犯そうとするほど狂わないだろう。 しかし・・気をつけねば。 玲奈ちゃんは香織がナイフを振りかざしても全く動じていなかった。寧ろ楽しんでいるかの様だった。 「あの子は何かある・・よな」 香織は泣き疲れて自分の部屋で眠っている。 明日になればけろっとして何もなかったように 俺の部屋にきてくれたらいいんだが。 「さて・・寝るか」 書きかけの小説を保存した後、パソコンをスリープさせロフトへ上がろとした時だった。 玄関のドアを2度叩く音が微かに聞こえた。 誰だこんな真夜中に!? 香織は合鍵を持っている。香織なら鍵を開けてドアを思い切り開けて入ってくるはずだ。 恐る恐るインターホンカメラを起動させ、外の様子を確認すると、カメラに向かって笑顔で手を振る玲奈ちゃんが立っていた。 「ど、どうしたのこんな夜中に」 無意識で声を抑えていた。万が一、香織が起きたらまた昼間の悪夢再来である。 「寝る前に少しお話ししようかと思って」 そう玲奈ちゃんは大きめの声で言った。 俺は慌てて彼女を部屋に押し込めドアを閉めた。 「香織が起きちゃうからトーンさげて」 また俺は声を抑えながら玲奈ちゃんに言った。 その瞬間、香織とは違う少し甘い、どこかエロティックな香りがして胸が高鳴った。 「ふふ。じゃあコソコソ話しましょ」 玲奈ちゃんは小悪魔的な薄笑いを浮かべ、俺の手を引いてソファーに座った。2人がけソファーの売り文句だったが、実際に届いた品は明らかに1人用で、2人で座ると密着どころではない。接着に近い。 「このソファー昼間見た時に一緒に座りたいなって思ったの」 待て待て待て待て やばいこれはやばい 香織と一緒に座る時は、膝の上に乗らせていた。 それでも色々ヤバかったのに、玲奈ちゃんは 完全に抱きつく形になり、胸やら足があちこち触れまくりでヤバい。これはヤバい。 「れ、玲奈ちゃんこれはちょっと・・」 玲奈ちゃんは顔を俺の右耳に近づけ、そっと囁いた。 「これならコソコソ話しやすいじゃん?」 ぐはっ・・だめだ いくら俺が理性の塊で、レベル85の大賢者であろうと我慢できない。さすがにこのままだとおっぱいを揉み出しかねない。 「れ、玲奈ちゃん!膝の上に乗って!ね!」 俺は少し強引に玲奈ちゃんの腰を持ち上げ、膝の上に乗せた。しかし、玲奈ちゃんは首に手を回したままで、体制が向かい合う形になってしまい、余計にいやらしい事になった。 「ふふ。これ・・キスしながら胸触ろうとしてんでしょ?」 ぎゃぁぁぁぁ!違う違う! そんなんじゃなくて!ダメだから! 今日会ったばかりだから! 「ダメだよ玲奈ちゃん。後悔するよ。絶対」 残りわずかな理性を振り絞り出た一言だった。 これでキスされたらタガが外れてしまうだろう。 そして溜まりに溜まった性欲を、本能のまま 玲奈ちゃんにぶつけて朝まで楽しむんだろう。 ごめん香織。俺は最低だよ。 出会ったばかりの十代の子を部屋に入れて、欲望のままにエロ賢者になる腐った大人だ。 こんな俺のお嫁さんになるって言ってくれてありがとう。 「後悔するかな・・」 玲奈ちゃんは顔を赤くして、瞳を潤ませながら言った。 「ほら・・やっぱりさ。寂しさを埋めるエッチって終わった後に余計辛くなるから・・」 玲奈ちゃんは体制を戻して泣き出した。 声を押し殺しながら。 俺は何となく、玲奈ちゃんの気持ちが分かる気がして、そっと頭を撫でた。 男には1人ではいられない夜がある。 女の肌に触れたくて仕方ない夜もある。 女にだってそれはある。 だが、男女で決定的に違うのは、男はどの女でも構わない。女は本当は大好きな人に抱かれたい、でも叶わないから仕方ない。 寂しさを埋めるSEXの後、後悔するのはいつも女の子だ。男は射精してしまえば賢者タイムを経て、明日へ向けて勝手に歩き出す生き物だ。女の子の気持ちや思いを置き去りにして。 それが分かる様になってからは、ワンナイトラブをしなくなった。愛している人以外とのSEXは、自分勝手な我儘にしか映らなくなった。虚しさだけが残るからだ。 「落ち着いた?」 ミルクで作ったココア。香織が大好きなやつだ。 これを飲めば俺の理性はフル充電されるだろう。 玲奈ちゃんもきっと落ち着くはずだ。 「ありがとう・・」 ブランケットを1枚羽織り、対面に座り直した玲奈ちゃんは、マグカップを両手で抱えてゆっくり一口飲んだ。 「甘い・・けど美味しい」 「なんでも話、聞くよ」 玲奈ちゃんは体育座りをして、膝に顔を埋めた。 そして、小さくか細い声で言った。 「はじめて。何もしなかった人」 何度か勢いでしてしまった事があるんだろう。 その度にもうしない、もう会わないと思ってきたのかもしれない。 「そっか」 「寂しいって私から一言言うだけでさ。若いやつは当然だけど。50歳とかのおっさんだってエロい事してくる。男なんてみんな同じ。男根でしか女を見てない。気持ち良くなれば誰だっていいんだ」 反論できん・・世の中、そんな男は大勢いるだろう。俺は違うと言いたいが、過去に経験があるだけにそうは言えなかった。 「玲奈ちゃん可愛いし、彼氏とかすぐ出来そうだけどな」 あからさまな話題逸らしである。 汚い大人だ俺は。最低だ。 「彼氏なんかいらない。私なんかに言い寄ってくるのなんか、どうせ好きな時にやりたいだけのクズばっかだし」 彼氏絡みでよほど辛い思いをしたのか・・ 彼女の中では、世の中全ての男が、性欲オバケに見えているのかもしれない。 「ちゃんと恋してみるとか」 それはあれか。順序を飛ばしてすぐやらせてしまうお前が悪いって言ってんのと同じだろう。 相手は19歳だぞ。もっと真剣に話を聞いてやれ 馬鹿雄大! 「どうやって?」 玲奈ちゃんが顔を上げて聞いてきた。 ここが正念場だ。1人の少女を救い出せるかの瀬戸際だ。考えろ。一番彼女の心臓に刺さる一言を。 捻り出せ。今、彼女が求めてる一言を。 「俺に恋してみるとか?」
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