39歳で青春するのはダメですか

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 次の日の朝からそれは始まった。香織が部屋に来た瞬間、玲奈ちゃんも部屋に来る。まるで香織感知センサーでも付いているんではないかと言うくらい、正確に香織がいる時にだけを狙って訪れる。  とにかく玲奈ちゃんはくっつきたがる。部屋にいる間中、隙あれば首に手を回そうとするわ、ほっぺたにキスしようとするわ、俺の手を取り自分の胸に持っていこうとするわ・・  その度に香織は怒り狂い、玲奈ちゃんを引き剥がしては俺に抱きついてくるという、一部の男子からしたら天国にいる様に思うだろうが、当の本人からしたら地獄以外の何者でもない。  香織の堪忍袋がどこまで耐えられるか気になって仕方ない。もう間も無く破裂するんじゃないかと思うと、玲奈ちゃんを早く何とか正気に戻したいところだが、弱味を掌握されているだけに、下手に動けない。  くそっどうすりゃいいんだ・・  「ちょっといい加減にしなさいよ!離れてよー!」  「嫌ぁー!雄大あったかいんだもん」  おーふ・・玲奈ちゃんの黒スト太ももが思いっきり左手に触れている。撫でたい撫でたい撫でたい撫でたい撫でたい  「学校でしょ!早く行きなさいよー!」  「嫌ぁー!さぼる」  「ほ、ほら!頑張って行っておいで」  玲奈ちゃんを優しく身体から引き離して言った。 顔近い顔近い!可愛い!いや違う!ダメだダメだ  「わかったよぅ雄大が言うなら頑張る!」  そう言って玲奈ちゃんは部屋を出て行った。  はぁ・・  2人して溜息をついた。お互いにそれが可笑しくて2人で笑った。  「香織。大丈夫か?」  「大丈夫です!今の溜息、安心しましたし!」  そう言うと香織が首に手を回して抱きついてきた。俺は遠慮なくぎゅっと抱きしめ返す。  「女の子の大丈夫は大丈夫じゃないよな」  「わかってるなら大丈夫にしてください」  香織を軽く身体から離し、キスをした。大人のキスだ。舌を香織の口に入れ、優しく香織の舌を愛撫する。  香織は目をしっかり閉じて、必死に首にしがみつきながら、俺の舌を一生懸命受け入れようとしている。なんて愛らしい・・キスはSEXより気持ちがいい。それは本当かもしれない。大好きな人とするキスに限るが。  どのくらいの時間、唇を重ねたかわからない。お互いに止まらなくなっていた。香織もだんだん慣れてきて、身体から力が抜けていくのがわかる。徐々に俺の舌を吸う力も強くなっていく。  自然と香織の胸に手がいく。服の上から軽く触ると、ビクンッと香織が反応した。そのまま数回揉んだ後、服の中に手を入れる。香織はキスに集中している。  ブラの中に手を入れる。あったかい。この暖かさは心にまでしっかりと届く。併せて、胸の柔らかい感触は脳を溶かし始める。思えば香織とこうしていゃつくのは初めてだ。  乳房を揉んでから、乳首に手をやり撫でる。徐々に固くなったのを指で軽く摘むと、香織からとてもエロい喘ぎ声が漏れた。  「香織・・ベッドいこ」  「は・・はい」  2人でロフトに上がろとした時、玄関のドアがいきなり開いた。2人ともびっくりして振り返ると、そこにはまた玲奈ちゃんがいた。  「学校休みでしたー!」  くっ・・超いい感じだったよ!?初めて香織と致すとこだったんだけど!?なんなの君なんで来るのなんなの!  「2人でロフトに行こうとしてたって事は・・」  「わかってんなら帰りなさいよ!邪魔!」  香織が顔を真っ赤にして怒っている。そうだそうだ!どうしてくれんだこれ!年甲斐もなく天井向いてんだよ!もうエベレストだよ!  「私に構わずやればいいじゃん」   え?  「私、パソコンで動画みるし。ヘッドフォンするし。気にしなくていいよ。」  「馬鹿じゃないの!そんな事できる訳ないでしょ!」  すいません香織さん。そのシチュちょっと興奮するかも・・  「旦那さんの方はまんざらでもなさそうだけど?それとも3Pにする?」  ぎゃぁぁぁ!!ぜひぜひお願いします!!  違っダメだよそんなの!そんな世界を知ったら  引き返せなくなるよ!  「さ、さっきから何言ってんのよ!いいから早く出ていきなさいよ!」  香織が動揺している。まさか3Pしてるのを想像したんじゃあるまいな・・  「でも本当。気にしなくていいよ。覗いたりしないし。だって2人が一緒じゃないと、私ここにいられないんだもん。夫婦ならSEXしたいの当たり前でしょ」  なんかちょっといい事言ってる感あるけど、玲奈ちゃんが来ないのが一番だと思うんだが・・  「ねぇ。話して。あんたの事」  香織が真剣な面持ちで玲奈ちゃんに言った  「どして?何を話すの?」  「なんでもいいよ。あんたの事。何にも知らないから私たち」  香織・・さすがだな。すげーよ。  「・・聞いたってつまんないし。話せるような事、特に無いし」  「そんな事ないさ。俺も香織も玲奈ちゃんの事、知りたいんだよ。もう他人じゃないだろ?俺たちの事も玲奈ちゃんに知って欲しいと思ってる。半同棲してる仲じゃん。ね?」  「わ、私は別に・・その・・仕方ないから聞いてあげるだけ!雄大のストーカーさんだから!私たちの身を守る為だから!」  す、ストーカーは貴女もそうじゃ・・  「ふぅん・・」  そう言うと玲奈ちゃんは自身の過去と、身の上話しを語ってくれた。19の身空でありながら、妙に大人びた見た目と、中身である事に納得させられる。  腐った男だと分かっていて、それでも身を委ねてしまうしかないと言うのはどれほど苦痛を伴うんだろう。それを何度も繰り返してしまうほどの孤独や虚無感とは、どれほど深い穴なんだろう。  寂しかったのではないのかもしれない。ただ、言い知れぬ不安と、誰かに必要とされたい欲求。SEXをしてる間だけは、その両方が満たされる事を知ってしまって戻れなくなったのではないか。  思春期特有の何処から湧き上がってくるのか、自分でもわからないぐちゃぐちゃした感情。怒りとも虚しさとも違う、言い様のない、例え様のない行き場のない、やり場のない心の叫び。    俺も経験したはずなんだが、遥昔の事過ぎて忘れてしまっていた。玲奈ちゃんはまだ、青春ど真ん中を生きているのだ。  「そんな事があったんだ・・」  香織は俯きながらマグカップを両手で握りしめ、玲奈ちゃんに何と声を掛けたらいいか考えている様だ。  「後悔はしてない。自分で選んだ道だし。やり直しなんて出来ないし。当たり前の中学、高校生活送りたかったなとは思うけどね」  当たり前・・か  「おじいちゃんに出会えて変われたし。まぁ正直、SEXに逃げなくなったってだけで、中身は変わってないんだけどね。へへへ」  玲奈ちゃんが恥ずかしそうに笑って言った  「いいんじゃないかな。それが玲奈ちゃんの青春で。俺なんてほんっと誰かに聞かせる様なイベントとか出会いなんて、これっぽちも無くてさ」  2人がじっとこっちを見つめている。これは2人の少女にとって大事な場面になる。大役だぞ雄大!  「その時は辛くて逃げ出したい事も、いつか笑って話せたら凄く青春したって事になると思う。それに・・いくつになっても青春ってきっと出来るよ。 今この瞬間も、俺、青春してんなーって思うし。こんな可愛い子たちに囲まれてんだもん。楽しいよ。 すっごく」  そう言うと2人はすくっと立ち上がり、玄関へ向かって歩き出した。  「て・・あれ?どうしました?」  恐る恐る2人の背中に呼びかけた  「可愛い子たちに囲まれてさぞ楽しいようで」  「なんか勘違いしてるよね。イラッとした」  えっ・・  「39にもなって青春とか」  「ちょっと考えちゃうよね」  ぐはっ・・それは・・  「実家に帰らせて頂きます」
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