17人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
かんぱーい!という歓声があちこちで上がる。
結婚というこの華やかな宴に、自分は一番ふさわしくない人間なのだと、しみじみと思う。
傍らで青く光るプールの水面が、灯された篝火の炎を映してゆらゆらと揺れていた。
ぱちぱちと薪の爆ぜる音がして、ふいにあの日の熱気を思い出す。
里華と最後に会ったあの日、街には夏の嵐がやって来ようとしていた。
風はあやうい熱をはらみ、重く湿って、僕たちの間をさらに重たくしていた。
長い髪がその風にふわりと舞い上がり、空が暗くなるなかで、里華は泣いた。
最初のコメントを投稿しよう!