花紺青《はなこんじょう・プルシアンブルー》

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「私ってなに?あっちゃんにとって私って何?」と彼女は叫んだ。 ──あのとき、僕はどんな不誠実な答えをきみに返しただろうか。 きみの、涙に濡れた顔が忘れられない。遠くにびかりと光る稲妻の鋭い軌跡と、風に舞う柔らかい髪。 ほんとうはあの髪に、もっと触れていたかった。きみを笑顔にしたかった。きみが好きだった。──好きだったんだ、里華。 にぎやかな音楽が始まって、僕はふと現実に戻る。今まさに、夕陽が水平線に沈もうとしていた。
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