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黒豹に手を引かれて連れていかれた先にそれは突如現れた。
「………っ!!」
驚いて思わず後退りしてしまう。
「ドラゴン……?」
そう、そこにいたのは西洋のドラゴンそのものだった。
赤く染まる大きな体と鋭い瞳。
まさか本当に存在するなんて思ってもみなかった為、興奮と恐れに足が竦む。
襲われたら一瞬で殺られるだろうと……
「ジルラーティスだ」
「ジル……何?」
「ジルラーティス。
我々には無くてはならない存在だ」
そんなジルラーティスに黒豹は躊躇わず近付き、その巨体をまるで馬を扱うかのようにポンポンと撫でる。
よく見るとジルラーティスには手綱が着いている。
まさかと思ったが、そのまさかだ。
黒豹はジルラーティスによじ登ると背中に跨がった。
そしてケイの方へ視線をやり、おいでと手招きする。
「マジかよ………」
しかし、ここで彼に背いても何処にも行き場は無いし、元の世界に戻れるとは思えない。
そもそもこの状況で一人生き残れる自信など無いので素直に従い、黒豹の後ろに跨がった。
そして手綱を持った黒豹は足でジルラーティスを蹴って合図し、ジルラーティスは立ち上がった。
その際に大きく揺れてケイは思わず黒豹の腹に手を回した。
するとジルラーティスは翼を伸ばし羽ばたき、空を飛んだ。
高く飛び上がったジルラーティスにケイは落ちたら即死だと必死に黒豹にしがみついていた。
なんせケイは高所恐怖症。
目を固く閉じ、黒豹の背に頭を埋め兎に角何も考えないようにぶつぶつ呪文を唱えるように呟いていた。
それからどのくらい経ったのか、随分空を飛んでいる。
最早ケイの精神は持ちそうになかった。
黒豹の腹に回していた手も緩み、体もふらふらし始めた。
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