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違和感
「ぅ……ぁ……」
あれ……俺はどうしたんだっけ?
ここは何処だ……?
ぼんやりと視界が霞む中、彼はゆっくりと倒れた体を起こす。
視界がはっきりしたところで周りを見渡すと生い茂る木々と小さな川しか見えず、時折小鳥のさえずりが聞こえるだけだ。
こんな森の中に俺来たっけ?なんて思っているとある違和感が彼を襲う。
一番最初に目に付いた違和感は手だ。
「なっ……何だ……コレ……」
鋭い爪に黒い毛に覆われており、よく見ると茶色の毛もほんの僅か混ざっていてヒョウ柄が見える。
明らかに人の手ではない。
違和感はそれだけではない。
お尻にもぞもぞとした物を感じるとそっと後ろのズボンに手を突っ込むと手が異物を掴んだ。
それを取り出してみると、くねくねとうねる尻尾だった。
引っ張ってみるとお尻が痛い。
この尻尾は自分から生えているのだと理解した。
「嘘……だろ……?」
彼は周りをキョロキョロと見渡し川の方へ移動すると水に映る自分の姿を確認する。
黒髪で白人のような顔立ちの大変綺麗な青年がそこには映し出される。
普通の人間の顔のようだが首から肩にかけてと、目尻やこめかみ付近にも毛がある。
更に彼の耳は丸みを帯びた獣の耳、それに牙まで生えていた。
この容姿、まるで人と獣の混血にでもなった気分だ。
それか様々な動物が混ざり合ったキメラのようだとも思った。
突然の変貌に青年、椿ケイは呆然とへたりこんでしまった。
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