愛がなくても謝罪はする

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■  汚れた服をなんとかしようと店に寄ることにする。店長の車はない。明かりの消えた空間へ滑り込むと、途端に涙が溢れてくる。  泣いたり傷付いたりする資格などないくせ、押し倒され、ひりひりする身体に温かい滴が染み込む。嗚咽も我慢できずもらしてしまう。 「ごめん、ほ、んとにごめんなさい」  踞り、このまま消えてしまいたくなる。わたしが居なくなったところで何の解決にもならないし、それどころか事なかれとまた言われるに違いない。  言われる? 誰に?  背中を向けた橘くんやユウトくんが浮かび、彼等はまだわたしに何か言ってくれるだろうか? いや、きっと言わない、言いたくもないはずだ。  ふらふらとロッカーに向かう。鼻を啜り事務所のドアを開けるとーー 「うわ、橘さん! びっくりした!」  佐野さんが暗がりの中、立っていた。驚いたのはお互い様、わたしもあんぐり口を開け、暫く声を失う。 「あなた、その格好……どうしたの!」  いち早く現状を飲み込んだのは佐野さん。 「あ、え、これはちょっと」 「ちょっとじゃない!」  照明がつき、佐野さんの瞳にわたしが映し出される。我ながら情けない姿。申し開きすらできず、首を横に振るしかない。 「この間はストッキング破いてたよね?」 「はは、そういえばそうですね。佐野さんには無様なところばかり見られてしまって、あはは」 「あははじゃないでしょ? なにがあったの? 泣いてるじゃない」 「すいません、大丈夫なんです。派手に転んでしまって、わたしってば相変わらず落ち着きがないなぁって考えていたら悲しくなって……」
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