愛がなくても友はいる

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「あと、そのへんにポテチあるでしょ?一緒に持ってきて」 「あ、はい」  足元へ無造作に置かれたコンビニ袋。おつまみにもなるスナック菓子がぱんぱんに詰められていた。  適当に見繕って部屋に戻る途中、捲られていないカレンダーに気が付く。キッチン、バスルーム、リビング、佐野さんの部屋は清掃が行き届いているようで時間が滞留していた。 「お酒とお菓子、持ってきました」 「よし、じゃあ飲もうか。グラスはこれでいいよね」 「わたしはーー」  断る隙間を与えず、注ごうとする。グラスにはまだ水が入っているので慌てて飲み干した。 「で、なんであの店長と不倫したの?」 「え?」  いきなり切り出され、とぼけた声を出してしまう。ユウトくんの件じゃないのだろうか。 「話によれば、あなたがやっと一人前になって今の店に着任した頃じゃない! 私はあんな店長にやるつもりであなたを教育した訳じゃないんだけど?」 「……すいません」 「しかも店長はバイトとも不倫してるそうね。はぁー、お願いだから仕事して頂戴」  アヤちゃんは勘のよい子だ。ユウトくんのわたしへの気持ちに気付いていないとは考えにくい。何故、ユウトくんの件を暴露しないのか。それにわたしを貶めるだけなら自分が店長と不倫していた事実は伏せておけばいいのに。 「あの頃は店長とは公私ともに支え合えるって本気で思ってました。奥さんがいると分かった時点で別れました」 「どうして同じ場所で働き続けられるの?」 「店長はわたしとの関係を遊びと割り切っていて、わたしの方は少なくとも奥さんがいると知るまでは本気でした。佐野さんが前に言われた通り、それが悔しかったのかもしれません。結婚して幸せな自分を見せつけたかった、とか? つまらない女の意地みたいな」 「ずいぶん他人事見たく話すのね。奥さんがいると知って別れたら許されると思ってる?」 「思いません。佐野さんも許しませんか?」  今ここには不倫した女とされた女がいて、離婚した女としようとする女もいる。
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