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「いただきます」
「いただきます」
2人で手を合わす。橘くんは最初にお味噌を口にし、わたしは唐揚げを頬張る。
咀嚼音が響く。あぁ、手料理を食べさせるのに何の感情もわかない。
「そういえばお昼は何を食べたの?」
「……竜田揚げ」
「そっか、被っちゃったか。ごめん」
「いい、美味しいから。唐揚げ好きだよ」
後は黙々と食すだけ。
わたしがメニュー被りを然程悪いと思っていないよう、橘くんも橘くんで唐揚げを美味しいと思ってはいないだろう。箸の動かし方で分かる。
手料理は薬じゃない。最後に一度美味しいと評されたところで回復しないんだ。こういうのは積み重ね、それを痛感する。
「ーーごちそうさま。皿は僕が後から洗う。それじゃあ、離婚について話そうか?」
「まるで離婚話がデザートみたいな言い方だね」
「そんなつもりはない。そもそも唯さんにとって甘い話じゃないだろ? 不貞行為に対してきちんとケジメをつけて貰いたい」
「慰謝料を請求するってこと?」
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