愛がなくても友はいる

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 橘くんはわたしがユウト君と関係を持ったから離婚に応じると決めつけている。それは違う。 「金銭的な要求はしない、君が不貞行為に走ったのは僕にも責任がある訳だし。不倫相手と別れてくれ、それだけでいい」 「責任? それだけでいいって何?」  つい不快な切り返しをしてしまった。不倫に関してはわたしにしか非がないのに、自分も悪いという建前が白々しい。 「僕が男として欠陥品だから唯さんは不倫した」  ここで【結局、唯さんはセックスしたかったんだ?】との発言がフラッシュバックする。 「愛がなくなったから、わたしを愛してないから離婚したいって最初に言ったのは橘くんじゃない」 「だから腹いせに不倫したんだろう? 唯さんをそこまで追い込んだのは僕だ。すまない」  腹いせ? ユウト君をあんなにも踏みにじってまで、わたしは橘くんに仕返しをしたかったの?  すまないって誰に謝ってる? 「……自分ばっかり綺麗事言わないでよ!」  わたしは椅子を蹴り、立ち上がった。
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