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愛がなくても未来は見たかった
「わたしは橘くんに離婚したいって言われなきゃ、このまま二人でお爺さんとお婆さんになっていたと思う」
それが充実した老後かどうかは別として、少なくとも同じ景色は見ていたはずだ。
「ねぇ橘くん、世の中の夫婦がどれだけお互いを理解してる? みんな小さな不満や不安を話し合って解決してるのかな? キスやセックスして確かめてるの? してないよね?」
「みんな同じだって言いたい? そういうのに目を瞑ってきたのが間違いだって気付かない?」
「気付いた、気付いたからこそ、こうなってるんだよ! あと気付かない? じゃなくて教えてよ!」
橘くんの本当の気持ちを教えて、わたしは拳を作った。
「お願い、最後に橘くんがどうしてこの生活をやり過ごせなくなったのか、ちゃんと聞かせて。愛がなくなったとか曖昧じゃなく教えて。わたしの何が悪かった? 何が嫌だった?」
無関心に蝕まれた夫婦が無理やり穴だらけの関心を寄せたところで、悪い部分しか見当たらないだろう。
けれど聞きたい。最後くらい、きちんと橘くんと向き合いたい。
「今更、傷付ける言葉を吐き出してどうする? あの時はこんな風に嫌だった、この時はどう感じたかとか、後出しでこじつけたみたいじゃないか。意味ない。時間の無駄だ」
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