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「意味がない、無駄って言うなら何も話せないじゃない」
「……また綺麗事って言われるだろうけど、唯さんには人生をやり直して貰いたい。女性として生き直して欲しいんだ」
「自分との結婚生活が失敗みたいな言い方はやめてって」
「事実、失敗だろう? 離婚は君の為になる」
「わたしの為に離婚するような言い方もやめてってば!」
「それも事実じゃないか。唯さんは別れを切り出されて数日おかず別の男を好きになれるんだ。離婚して新しい恋愛を始めればいい」
「そ、んなの……」
「大丈夫、君なら出来るさ」
最大の嫌味か、それとも場違いな励ましか、真顔で伝えられた。汚い言葉を一切使わず、橘くんはわたしを否定しきる。
「僕たちは離婚をする。君は不倫を解消する。以上だ」
五年連れ添った相手の感情がこれほどまでに掴めないとは。
淡々と語る口調は離婚ありきで、条件の項目に移る。
「すぐに家をでていかなくてもいい。金銭面で不安があるようなら言ってくれ」
「わたしを馬鹿にしてる? 不倫した妻に何処までも寛大なんだね」
「馬鹿にするはずない。きっと不倫しようとしまいと気持ちは変わらなかったからね。僕は君と別れたい、離婚をしたいんだ」
喧嘩にすらならない。もはや赤の他人との方が喧嘩になりそうなレベルだ。わたしは力が抜け、床へ崩れ落ちた。
「それじゃあ水曜日に、また」
この状態で見舞いに行き、病院で診察を受けようとする精神を疑う。いや、一番神経を疑われるのはわたしなんだろうが、それでもこう思わずにはいられない。
わたし、なんでこの人と結婚したんだっけ。
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