愛がなくても未来は見たかった

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◆  そして水曜日がやってきた。橘くんと駅前で落ち合い、ユウト君とは病院で待ち合わせだ。前日に双方へ連絡したが既読スルーされた。  二人共来なくてもそれはそれでいい、でも彼等は来る。わたしが意地で来たように。  改札口を抜けるとさっそく橘くんの姿があった。近寄る前にこちらに気付き、視線を上げる。 「おはよう。ホテル暮らしは不便してない?」 「大丈夫。他の荷物も近いうちに引き取るからもう少し置かせてくれる?」 「もちろん、いいよ。処分する物があればやっておく」  挨拶もそこそこに橘くんは要件を切り出す。  待ち合わせの五分前には着き、遅刻しない。すべき物事を最優先に片付けていく性格は相変わらずだなぁと思う。  わたしは離婚の話し合をした後からホテル住まいをしている。答えた通り不便はなく、正式に辞令が出ないと転居は無理なものの、新居の目星もつけた。  淡々と身の回りを整理していくが、不倫に対して贖罪の気持ちは忘れてない。ただ、どう償えば良いか立ち止まって思案するより、自らの足で立つのが先決ではないだろうか。  仮に二人がわたしを罪悪感に縛り付けたいなら話は別だが、殊に橘くんはそれを望まない。  橘くんはわたしに期待などしないから。  これが都合の良い解釈と非難されようと、そういう橘くんだからこそ離婚を決めたんだ。  そもそも離婚の理由など他人に理解されなくていい。
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