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正直なところ離婚を切り出されるほど、不満を持たれていることに驚いた。わたしには彼、橘くんの気持ちが離れていく気配は感じられず、心当たりを探してもこれといった出来事が浮かばない。
ただ、橘くんの離婚したい気持ちが本気なのは五年も一緒に暮らしていれば分かる。橘くんは冗談とかイタズラ、ましてや、わたしを試そうと離婚をちらつかせる人間じゃないので。
寝不足の頭はどんより重く、テーブルへ肘をつく。目頭を押さえても涙はでてこないのは、離婚したいと言われショックは受けたものの、悲しくはないからだろう。
「仕事いかなきゃ」
この後の予定を言葉にして椅子を蹴る。ふと橘くんの皿が目に入り、どうやら愛がなくても朝食は食べられるらしい。完食してある。
わたしも乾いたトーストをひとかじりしておく。マーマレードが甘く感じられた。
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