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作業中これといった会話はない。これは今日に限ったことじゃなくて、わたし達は仕事以外の会話をほぼしない。
沈黙を見かねた店長からコミュニケーションの取り方をアドバイスされている。
ユウト君はスポーツ観戦が好きらしく、野球やサッカーの話題を振れば応じるそう、だ。
しかし、わたしとしては業務に差し支えがなければ問題ないと返し、店長には人との共通点を見いだし、さらに繋げる才能があるんだとも言っておいた。
「いやいや、才能なんて大袈裟な」
褒められたと勘違いした店長の笑顔が浮かぶ。もう記憶の中にしかないわたしだけに向けられた笑顔に重ねるよう、そっと顔を緩める。
ふと視線を感じ顔を上げたら、不満気にこちらを見下ろすユウト君が居た。鋭い眼差しを浴びた旋毛で緊張感を察する。
「手、とまってますよ」
「あ、ごめんごめん、すぐやるね。やっぱり男の子は作業が早い。おばさん、ついていけない」
「あの」
「ん?」
「悪いと思ってないなら謝らなくていいです」
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