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愛がなくても朝食は食べる
トーストにジャムを塗りながら、一体この人は何を考えているんだろうと思う。
いつも通り起きてきて、席につき、コーヒーを飲む人は昨夜わたしに離婚を申し出たのだったった。
わたしも着席して、温かい湯気の向こう側へ話し掛けてみる。
「昨日の話、その、離婚したいってことだけど。納得できない」
一睡もできなかった、非難を込めた視線を向けた。
「ああ、まぁ、そうだろうな。返事は急がない。覚悟が決まったら教えてくれ」
「覚悟って……」
「いきなり言われても混乱するだろう? ゆっくりで構わないから、情況を飲み込んで欲しいんだ。お互い、朝は忙しない。他に時間を作って話そうか」
マグカップを置く音でこの件は閉じられる。そして、わたしに愛はないと告げた唇が「いってきます」を同じ音程で発した。
離婚したいと言われた以外、普段と変わらない朝。
食欲などないのに焼いてしまったトーストがジャムで塗り潰され、わたしを見上げる。
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