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(とうとう着いてしまった……)
予定の20分前に到着。
相手が先に着いていることは分かっているが、何分顔も知らない。
ショッピングモールで待ち合わせをしていたのもあって、人も多い。
わたしは「着きました。どこにいる??」とメールを送信した。
1分としないうちに、鳴り響くバイブ音。
「3Fのゲーセン前にいます!オレンジのパーカーに黒いジャケット羽織ってます!」
なんとも分かりやすい特徴を送ってきてくれた。
「了解です。わたしは普通に黒スーツです(笑)」
こちらの服装も伝え、わたしは車を降り、ゲームセンターへと向かった。
人で溢れ返るモール内を黙々と歩く。
わたしは顔をあげるのが苦手なので、ひたすら
意識して下を向く癖がある。
勿論、歩くのに支障がない程度にだ。
前を向くのも、対向する人に顔を見られるのも
どうにも嫌なのだ。
自分に自信がないのが、一番の理由だろう。
顔は中の下、体型はただのデブだ。
全体的にバランスの取れた太り方をしているのが
不幸中の幸いだと思っている。
そんなわたしが、今からネットで知り合った
男の子と会おうとしている…。
嬉しさと不安が半々で心を揺らす。
どうか、どうか、ガッカリされませんように……と。
ゲームセンター目前。
視力のいいわたしの視界に、メールで伝えられた
服装の男の子が飛び込んできた。
咄嗟に通路の端に寄り、そっと観察してみる。
(わ、可愛い気がする…。服装も好きな感じだ)
少し癖のある短すぎない黒髪、人懐こそうな雰囲気、背は高めで全然太っていなそう…。
その子はキョロキョロしたり、ゲーム機の間をウロウロしたりと、見るからに挙動不審な行動をしている。
(あっちも緊張してるのかな…?)
そう思える様子に、少し心が落ち着く。
楽しみや不安でドキドキしているのは、わたしだけじゃなかったんだ、と。
そっと人混みに紛れるように、わたしはゲームセンターへと歩みを進めた。
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