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UFOキャッチャーの台の間を抜け、少しずつ距離を詰める。
相手には気づかれずに、背後まで近付く。
前から声をかける勇気は、どうしても持てなかったから。
後ろに立って、改めて思う。
わたしより遥かに大きい…
見上げないと顔も見れない程だ。
意を決して、背の高い彼の背中をツンツンとつつく。
一瞬ビクッとして、パッと振り向く彼。
(あ、やっぱり可愛い…)
わたしを視界に捉えると、ニコッと笑ってくれた。
「こんばんは!えと、さやかさん??」
「そうです。こんばんは」
せっかく明るく挨拶してくれた彼に反し、あまり愛想のない言い方になってしまった。
(気を悪くしたかな…)
不安になって、そっと顔色を伺うと、初めて目が合ってしまった。
視線を外すこともできずに、彼を見つめる。
彼もわたしを見つめたまま、ここだけ時が止まったかのような時間が流れた。
先に沈黙を破ったのは彼だった。
「思ってたより小さいんだね!それに可愛い!」
「えっ、可愛くないよ……」
思いがけない彼の言葉に、分かりやすいくらい
しどろもどろになる。
「いーの!俺から見たら可愛い!今日来てよかった♪」
軽く受け取ればいいだけなのかもしれないが、彼が発した誉め言葉が、わたしの耳や心をそっとくすぐる。
そんな、こんなに嬉しい言葉を言ってもらえるなんて…。
お世辞でも泣きそうなくらい、わたしは嬉しくて堪らなくなった。
「……ありがとう。冗談でもうれしい」
いっぱいいっぱいで、それしか言えないわたしをフォローするかのように、頭をグリグリと撫でられる。
ビックリして顔をあげると、いたずらっ子のように笑う彼。
「冗談じゃないよ!可愛いからギュってしたくなったけど、さすがに嫌がられたら悲しいから、我慢しとく!」
わたしの中の何かが、まるでメーターのようにギュン!と上がるのを感じた。
ドキドキと心臓が破れそうな程、高鳴る。
「えっ、えっ、嫌じゃないけど!あ…」
どうにか発した言葉も途中に、腕を引っ張られて傾くわたし。
そのまま彼の腕の中へ、ポスンと倒れる。
「わ!ごめん!え、ちょ、ここゲーセン…//////」
倒れかかったまま、彼に抱き締められて、身動きがとれなくなった。
急展開すぎて、これこそ思考回路はショート寸前だ…なんて、脳内が現実逃避してしまう。
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