秋:月見の夜に夢を見る

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 ガビーン。という効果音が、オレの耳の奥で聞こえたようだった。  こいつら、一体どういう生態してるんだとは思ってたが、まさか人(?)造生命だったとは。何だそのマジでSFみたいな設定は。  謎のお笑い宇宙人だと思っていたが、意外と重い生い立ち抱えてたぞこいつ。  オレが軽くショックを受けている間にも、奴はペンを動かし続ける。  地球は楽しいです。  そしてとても美しい。  わたくし達とは全く違う営みで生命が生まれ、生きてゆく姿は、非常に素晴らしいものだと思います。  もっと見分を広げて、もっと様々な生命に触れてみたいと存じます。 「うゆっ! うゆっ!」  と、奴は興奮しながら、そう書かれたクロッキー帳を掲げる。  だけど、奴の一番の願いは、きっと。 「それでも、くりまんじゃろ星には帰りたいんだろ?」  そう言うと、奴はぴたっと動きを止め、目をぱちくりさせた。  そして、「うゆうー……」と言いながら、さっきまでより少しだけゆっくりと、ペンで言葉をつづる。  帰りたいです。  そう、それが本音だろう。  父上と母上には御心配をおかけしていると思います。  一刻も早く帰還して、両親を安心させたい所存です。
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