3人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
それは何で御座いましょうか?
きょとんとしながら訊ねる奴に、にやっと笑いかける。
「まあ、見てのお楽しみだ」
そうして、冷蔵庫にあったそうめんを一人前よりちょっと多くゆで、希釈しためんつゆのカップに氷をぶちこんで、万能ねぎとしょうがを少々。
庭先にバーベキュー用のテーブルを出して、その上に諸々を置き、水を入れた流しそうめん器を、スイッチ・オン。
ブイーンと音を立てて、流れるプールのように水が回転し出した中に、そうめんを入れる。
そうめんは、水を得た魚のごとく勢いよく回転し始めた。
「うゆ? うゆうゆうゆ!」
クロッキー帳に日本語を書くことも忘れて、奴は大興奮。
そんな奴の目の前で、箸を流しそうめん器に突っ込み、そうめんの流れをせき止めてすくい上げ、薬味を入れためんつゆに浸して、ずるずるずるっとすすりこむ。
うむ、美味い。
「うゆ! うゆーっ!」
テンション高くはしゃぐ奴の口にも、そうめんを持っていってやる。ちゅるちゅるちゅるっとめんを吸い込んだ奴は、しばし呆然とした後、パアアア~っと表情を輝かせた。
「美味いか?」
「うゆ!!」
問いかけに、奴はこくこくうなずき、
「うゆっ、うゆっ!」
と、伸びをするように精いっぱい手を掲げる。
最初のコメントを投稿しよう!