3人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
もしかして、これは。
「自分でやってみたいのか?」
「うゆっ!」
元気のいい返事に、箸を渡す。
ペンと同じく、どういう原理でくっついてるのかわからないが、とにかく箸を手にした奴を掌に乗せ、流しそうめん器に近づける。
が。
「うゆ? うゆー……」
やっぱり人間のように上手くはいかないらしい。四苦八苦していると、奴はぐらり、とバランスを崩し。
「あ」
ぼっちゃん。
流しそうめん器の中へと真っ逆さまだった。
「おおおおい大丈夫かお前えええええ!?」
雨に濡れただけでカビるような奴だ。水に浸かったらそれこそ皮が破けてあんこがはみ出すんじゃないか。
慌ててスイッチを切ろうとするが、耳に届いたのは、助けを求める声ではなく、ぴきゃぴきゃぴきゃ、という、今まで聞いた事も無いような笑い声だった。
奴は、水の流れに乗って、楽しそうに。
そうめんと一緒に回転していた。
……ああ、大きさ的に、流しそうめん器が、丁度いい流れるプールになるのか、こいつ。
脱力するオレの目の前で、奴は本当に嬉しそうに、水しぶきをあげながら泳ぐ。
仕方ないな、と苦笑して見守りつつ、オレは、残りのそうめんを普通につゆにつけてすすりこんだ。
最初のコメントを投稿しよう!