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数日後。
「うゆっ! うゆうゆうゆ~!」
平日の早朝からぽかぽか顔を叩きながら起こされて、何事かと寝ぼけまなこをこするオレに、奴は、
「うゆうゆ! うゆうゆ!」
と窓の外の庭を指し示す。
奴が庭に気を向けるという事は。
察して、パジャマのまま奴を肩に乗せて階段を駆け下り、庭先の木へと飛びついた。
そこには予想通り。
見事羽化した立派なモンシロチョウ。
蝶は、オレ達の前でぱたぱたぱた、っと羽を羽ばたかせると、夜明けの空へと力強く飛び立つ。
「元気で過ごせよー」
「うゆー!」
オレと奴は、手を振って蝶を見送る。
やがて、蝶が空の色に溶けて見えなくなったところで、ふと肩を見ると、奴は、まだ天を見上げていた。
自由に飛べるのが、心底うらやましそうな表情をしていたように見えたのは、オレの気のせいだろうか。
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