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春:運命の出会い
奴との出会いは、緑香る春の終わりの、学校からの帰り道。
奴は、
道端に落ちていた。
それはどこから見ても、立派なくりまんじゅう。
何故今時道にむき出しのくりまんじゅうが?
すっげー不自然。
とても、あやしい。
ていうか、でけーよ。
様々な考えが頭の中を巡った後、オレが取った行動は、
(とりあえず、避けて通ろう)
だった。
しかし、脇を通り抜けた途端、そのくりまんじゅうに、にょきっと丸い手足のようなものが生えて。ぱちっと、半円形の目が開いて。
「うゆーっ!」
と、鳴きながら飛びついてきたのだ。
オレは衝撃のあまり、十秒ほど固まった後、とにかく叫びながら、走って逃げた。しかし奴は、うゆうゆ言い、ぴょんぴょこ跳ねながら後を追ってくるではないか。
一キロメートルほど走って息が切れ、ゼエゼエ言いながら諦めて立ち止まったところで、
「うゆ、うゆ~」
奴はぴょい~んとジャンプして、オレの肩に乗った。
「な……っ、何なんだよ、お前は!」
問いかけても、「うゆ、うゆうゆうゆー!」の繰り返し。
「『うゆ』じゃわかりません」
冷たく言い放ってやったら、奴はさっと、日本語の書かれたボードを差し出した。
ちなみに、達筆だった。
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