春:運命の出会い

1/3
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ

春:運命の出会い

 奴との出会いは、緑香る春の終わりの、学校からの帰り道。  奴は、  道端に落ちていた。  それはどこから見ても、立派なくりまんじゅう。  何故今時道にむき出しのくりまんじゅうが?  すっげー不自然。  とても、あやしい。  ていうか、でけーよ。  様々な考えが頭の中を巡った後、オレが取った行動は、 (とりあえず、避けて通ろう)  だった。  しかし、脇を通り抜けた途端、そのくりまんじゅうに、にょきっと丸い手足のようなものが生えて。ぱちっと、半円形の目が開いて。 「うゆーっ!」  と、鳴きながら飛びついてきたのだ。  オレは衝撃のあまり、十秒ほど固まった後、とにかく叫びながら、走って逃げた。しかし奴は、うゆうゆ言い、ぴょんぴょこ跳ねながら後を追ってくるではないか。  一キロメートルほど走って息が切れ、ゼエゼエ言いながら諦めて立ち止まったところで、 「うゆ、うゆ~」  奴はぴょい~んとジャンプして、オレの肩に乗った。 「な……っ、何なんだよ、お前は!」  問いかけても、「うゆ、うゆうゆうゆー!」の繰り返し。 「『うゆ』じゃわかりません」  冷たく言い放ってやったら、奴はさっと、日本語の書かれたボードを差し出した。  ちなみに、達筆だった。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!