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「アニキ、人間の匂いだぜ」
洞窟の更に奥。
細身の男が鬼のような姿の大男にそう言った。
「お?村長が寄越した食糧か?」
アニキと呼ばれた鬼男は恐怖に震える女を撫でている。
「いや、この歩き方は普通じゃないね。…ギルドの奴だよ!間違いない!」
「はっはっは!女どもを助けにギルドの連中を寄越したか!俺たち『ギムレ兄弟』とのヤクソクを破った代償だ…人質は全員喰らっちまうか……といいてえところだが面白れえ。おい、ラグ。ほかの女どもも用意しておけ。人質をちらつかせればギルドの連中は手出せねえだろ」
女の表情が絶望に変わる。
これこれ、この表情が最高なのよ。
「さすがアニキ!ギッタギタにして食っていいかな!?」
ラグと呼ばれた細身の男はよだれを垂らしながら口もとが裂けてくる。
やれやれと思いながら鬼男、ギムレが「もちろんだ、弟よ」と言った。ラグは人よりも獣に近い。
人間と見るとすぐに食欲を剥きだしにする。
まあその分、耳や鼻が効くので便利ではあるが。
やった、やったと小躍りしてるラグを背にギムレがにやりとほくそ笑む。
さあ来てみな…ギルドのクソども。
こっちには人質がいるんだ…。
楽しい宴を始めようぜ…!
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