Side-A

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「“竜化“完了!」 先程の細身だったラグの身体が倍以上の体格になる。 耳や鼻は尖り、体毛が全身を黒く覆い尽くし…その黒の体毛を照らすような銀色の牙が二本、口元に備わっていた。 ラグはギルドの者から『銀の大牙』として恐れられている。 殺傷能力に優れた牙や爪は人間など紙のように切り裂き、砕く。 その危険度の高さから擬態獣としての強さは『SS級』として扱われている。 “竜化“は人型の擬態獣が本来の姿に戻る事を意味する。竜とは言うが、実際には人狼型のラグや鬼型のギムレのように実に多種多様な姿を持つ。 大抵、竜化する擬態獣は人並みの知能も備えているため最低でもSSレート以上と相場が決まっている。 本来、Sレートの擬態獣でさえ4、5人程度のギルド構成員がチームを組み戦うほどだ。 SSレートなら10人以上は必要だ。 だが、人質がいる手前逃げるわけにはいかない。 ロウガは両足を肩幅大に開き「来いよ」とラグを挑発するように言った。 「殊勝だねえ…ラグ、首から上は狙うなよ。人間は頭やるとすぐに死んじまうからな」 「がってん!」 ラグは烈風が巻き起こるほどの速さで、ロウガへと向かった。
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