無題

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無題

「とても星がきれいだね」  彼女は僕にそう言った。  僕は、そうだねと短く返した。 「いつもの町からじゃ、こんなに星は見えないもんね」  僕は車から降りて彼女の横に座り一緒に星を見る。  キラキラと夜空に散りばめられた星は今まで見たどの景色よりきれいだった。    どれくらい時間がたっただろうか?  彼女は急に立ち上がるった。 「少しだけ、散歩しない?」  そう言いながら彼女は手を差し伸べる。  僕はそれに捕まり立ち上がった。 「どこまで行くのさ?」  質問に彼女は、すぐそこだよ、と答える。  どこかもわからい森の中を車で走っていたら偶然見つけた広い草原。  そんな人類がまだ到達してないような神秘的な場所を彼女と手をつなぎながら歩く。  この時間が永遠に、永遠に、続けばいいのに…………  僕は涙が出そうになった。 「泣いちゃだめだよ。笑わなきゃ」  彼女の言葉に僕は心の奥底の声がもれる。 「僕と一緒に、これからを過ごさない?」  そう呟いたとき、彼女は嬉しそうに笑った。 「だめだよ。もう、私達は戻れないんだから」  わかりきっていた答えだった。 「こんなに静かだと、この世界に私達二人だけみたいだね」  ゆっくりと歩きながら彼女はそんな言葉を口にする。  僕はまた、そうだね、と短く返した。 「さあ、お姫様、車に戻りましょう!」  極力明るく笑いながら彼女にそう告げ、右手を彼女の肩に回し、左手を膝裏からすくい上げる。  彼女は両腕を僕の首に回しとても幸せそうに笑った。  僕も、それにつられてとても幸せにそうに笑った。  お姫様だっこをした二人は幸せそうに星々に明るく照らされた草原を歩いて車に戻った。 「次に生まれてくるときはあなたと普通に出会えますように……………………
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