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しばらく歩くと駄菓子屋のある商店街に辿り着く。下校時の憩いの場だ。
「池の蛙に行こうぜ」
あいつはそう言うと先を歩き、皆が集まる駄菓子屋「池の蛙」に行った。
名物のゲコ婆さんのタコ煎餅山葵マヨ添えは美味しい。1枚20円だ。
「婆ちゃん! 婆ちゃんもっとマヨネーズかけてよ!」
僕が遅れてお店に入ると、同じ学年のウザいムードメーカーでお坊ちゃまの定が優しいゲコ婆さんにたかっていた。
「50円払ったんだから、多めにね!」
「はい、はい」とゲコ婆さんはおっとりとした優しい声色で山葵マヨネーズをお好み焼き屋の名残のある手捌きでタコ煎餅にかけていた。
いつもと同じ分量だった。
「ゲコ婆さん! 量が変わんないよ!」
「ほぇっ?」わがままな定に苛つかれ、ゲコ婆さんは少し驚いていた。
そこへあいつも割って入った。
「ゲコ婆さん、俺にもタコ煎餅! 司は何か食べるか? たまには奢ってやるぜ?」
この前のあいつの全財産は20円だった。
「お前お金持ってんのか?」
「あるよ」
そんなやり取りをしていると、クラスの優等生、沖田泉がお店に来た。
友人と甘すぎるアイスティーを買った泉は僕とあいつを一目見ると、
「キモ。司、何でこんな人と友達なの?」
と一言吐くとお店を出て行った。
泉はあいつにスケベ発言を連発されて以来、酷く嫌っている。無理もない。
「お前のせいで、クラスの女子から距離を取られてるじゃないか」
「エロは地球を救う。ほれ、食べな」
あいつは気にする素振りも見せずにタコ煎餅を半分割ると僕に渡した。
「あ? 奢ってくれるんじゃないのかよ?」
「悪りぃ、手持ち20円しか無かった」
渡されたタコ煎餅は、山葵マヨネーズがあまり付いていなかった。
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