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期末テストも終わり、三学期も残り僅かとなった。
進路相談を済ませて下校する。いつものポイントに着いたが、あいつは現れなかった。
翌日、クラスメイトから転校の話を聞いた。
なんでも、母親の都合で故郷の農村へ帰るそうだ。
その日の下校時、川沿い。
あいつは現れた。
「司、よう」
「なんだお前、待ってたのか?」
「そんなとこだな」
いつものように並行して道を歩く。だだ今日は少し変な感じだ。
「転校するのか?」
「ああ。俺も驚いてる。急に決まった事だったから」
「そっか」
唐突に聞いてみたが、事情があるようだ。深くは聞かない方がいいのかもしれない。会話は重くなって止んでしまった。
商店街の通りに差し掛かり、駄菓子屋「池の蛙」の前を歩くと、泉とばったり出会した。
泉は友人といつもの甘過ぎるアイスティーを飲んでいた。
「あ……」
目が合った。また何か言われるのか、とあいつと二人で身構えたが、泉は一言告げるとさっさと行ってしまった。
「元気でね、ヘンタイ君」
あいつの顔は真っ赤になっていた。ビンタを喰らった訳じゃなく、単に照れていた。
それからのテンションの変わり様は一目瞭然だった。
「折角都会に来たのになぁ。また、ど田舎暮らしに戻ってしまう。向こうは漫画の最新刊が本屋に並ぶのが三ヶ月も遅いんだ」
「じゃあ毎週ネタバレ電話をしてやるよ」
「やめろ!」
和やかな会話が戻り、いつものノリで僕たちは別れた。
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