2

3/9
前へ
/15ページ
次へ
期末テストも終わり、三学期も残り僅かとなった。 進路相談を済ませて下校する。いつものポイントに着いたが、あいつは現れなかった。 翌日、クラスメイトから転校の話を聞いた。 なんでも、母親の都合で故郷の農村へ帰るそうだ。 その日の下校時、川沿い。 あいつは現れた。 「司、よう」 「なんだお前、待ってたのか?」 「そんなとこだな」 いつものように並行して道を歩く。だだ今日は少し変な感じだ。 「転校するのか?」 「ああ。俺も驚いてる。急に決まった事だったから」 「そっか」 唐突に聞いてみたが、事情があるようだ。深くは聞かない方がいいのかもしれない。会話は重くなって止んでしまった。 商店街の通りに差し掛かり、駄菓子屋「池の蛙」の前を歩くと、泉とばったり出会した。 泉は友人といつもの甘過ぎるアイスティーを飲んでいた。 「あ……」 目が合った。また何か言われるのか、とあいつと二人で身構えたが、泉は一言告げるとさっさと行ってしまった。 「元気でね、ヘンタイ君」 あいつの顔は真っ赤になっていた。ビンタを喰らった訳じゃなく、単に照れていた。 それからのテンションの変わり様は一目瞭然だった。 「折角都会に来たのになぁ。また、ど田舎暮らしに戻ってしまう。向こうは漫画の最新刊が本屋に並ぶのが三ヶ月も遅いんだ」 「じゃあ毎週ネタバレ電話をしてやるよ」 「やめろ!」 和やかな会話が戻り、いつものノリで僕たちは別れた。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加