第七章 ほんとうの幸せ

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 改札を出たとき、空模様は突然の雨に見舞われていた。 ≪しまった、傘を持ってない…≫  途方に暮れながらぽつりと独り言を言ったとき、私は偶然後方に居合わせたセーラー服姿の少女と眼が合った。それが蓮美だったのだ。 ≪あの……あなたはどちらまで行かれるのですか?≫  彼女は小首をかしげながら、澄んだ眼で私を見つめた。 ≪あ…いや、ついこの先の姫川コーポレーションに≫ ≪そうだったんですね。私もなのです。よろしければ、ご一緒に傘に入られますか?≫  彼女はそう言うと、傘を広げ、私へと傾けた。 ≪え?でも、傘からはみ出した君の肩が濡れてしまうじゃないか≫ ≪大丈夫ですよ。それとも…女子高生と同じ傘に入るのは恥ずかしいですか?≫
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