第七章 ほんとうの幸せ

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「大丈夫?蓮美」 「絵里は大げさなんだから。ちょっと眩暈がしただけなのに。きっと軽い貧血か何かだから」  箱根の土産物街を散策していた蓮美と絵里にとある組み木細工の店先前でちょっとしたアクシデントが起きていた。蓮美が眩暈を起こし、その場にしゃがみ込んだのだ。  すぐに二人は宿に引き返し、部屋の布団の上に蓮美は横になっていた。 「今、蜂須賀氏に連絡いたしますから!」  絵里は私に連絡をつけようとスマホを手にするが、蓮美は首を横に振った。 「絵里、本当に大丈夫だから!雄一郎さんは確か今週は忙しいと言っていたから、あまり迷惑をかけてはいけないの」 「何言ってるんですか!あなた方ご夫婦はなんだかヘンですよ?大変なときは遠慮なんかしていないで、甘えてもいいんですっ!」  絵里は今度こそ私に連絡を取ろうとスマホで呼び出すのだが、応答がなく、留守番電話に切り替わってしまう。 「ああっ!もう、自分の奥様が大変なときに蜂須賀氏はっ!!」  珍しく絵里はカッカッと怒り心頭である。親友として実はこの旅行も蓮美の為を思って誘ったのだ。日ごろから寂しそうに見える彼女を見るに見かねてのことだった。
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