第七章 ほんとうの幸せ

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「こうなったら……奥の手を使うか」  絵里は蓮美のスマホを半ば強引に借りると、秘書・早坂のスマホに連絡をとった。 「………はい、早坂でございます」  彼のスマホには“蓮美奥様”と画面表示されている。 「……すみません、蜂須賀氏の秘書の早坂さんですか?」 「然様にございますが、恐れ入りますが貴女様は?」  蓮美とは違った声の主からの電話に、早坂は異変を感じた。 「蓮美と一緒に旅行に来ている絵里です。実は、蜂須賀氏と連絡が取れないのです。彼女が…急病で連絡を取りたかったのですが」 「なんですって?解りました。すぐに社長に連絡を取りますので、折り返しご連絡いたします」  早坂は慌てて電話を切ると、私のスマホに連絡を取った。そこへちょうどシャワーを浴びてバスローブに着替え終えた私が電話口に出た。 「もしもし……ああ、早坂か?どうしたんだ?何か明日の予定で変更事項でも?」  仕事のことだと思って話を進めようとする私に対し、早坂はまくし立てるように声を上げていた。 「社長!先ほど、蓮美奥様が急病だということで、絵里様とおっしゃる方からこちらにお電話を頂きました。社長の携帯が繋がらない…とのことだったので」  …………なんだって!?  私は思わず胸騒ぎを覚えた。 「早坂!悪いが私は今から箱根に蓮美を迎えに行く。明日は出社出来ないと皆に伝えておいてくれ。これは私用だからお前は来なくていい。自分の車で行く」 「え?あ、ちょっと待ってください、社長!お車なら私が出します…」  早坂は慌てて返事をしようとしたが、既に電話は切れていた。 「…………こうなることは予想しなくもなかったが、やはり……社長は奥様のこととなると次元が変わるようだな」
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