第七章 ほんとうの幸せ

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 蓮美の容態も心配であったが、自分の主の慌てぶりにおおいに戸惑いを隠しきれない早坂だった。  私はバスローブを脱ぎ捨て、ウォークインクローゼットやチェストを片っ端から引っ掻き回し、ようやく自分の服を見つけて着替えると、玄関を慌てて飛び出していた。  マンションの地下駐車場でそのまま車に乗り込み、そこからタイヤを鳴らす勢いで飛び出していった。 自動速度違反取締装置(obis)を気にすることもなく車を飛ばし、厚木で降り、西湘バイパスをひた走る。こうして箱根湯本まで一時間程度で辿りついた。 宿のフロントでは、絵里が待っていた。どうやら早坂から折り返し私が来ることが伝えられていたらしい。 「蜂須賀様!」 「絵里様、連絡すまなかった。蓮美の容態は?医者には診せたのですか?」 「いえ……。蓮美が大したことはないって言い張るので、せめて蜂須賀様にでもお伝えしようと思って連絡を入れたのです」 「部屋に案内してください」 「はい」
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