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少女が小学五年生になると、流石にいい年なのか人前で泣くようなことはなくなっていた。そんなある日のこと、県の習字コンクールが開催され、少女は銀賞を獲得した。銀賞は誉ある賞なのだが、何故か少女は不服そうな表情を見せていた。
友人がどうしてかと尋ねると、少女は機嫌悪く答えた。
「なんであいつが金であたしが銀なのよ! あたしの方が上手いのに!」
少女の机の上に白い光を放って輝く習字コンクールの楯、その斜向かいにある机の上には金色の光を放って輝く習字コンクールの楯があった。
そう、習字コンクールの金賞は同じクラスの少年が獲得したのである。その少年は、少女の涙が通じないあの少年である。あれから数年経った今でも少女は少年のことを心の底から疎んじているのであった。
そして、今回習字コンクールで「負けた」ことにより、少女の機嫌は最低最悪であった。
二人は県の習字コンクールの金賞銀賞のワンツーフィニッシュを祝うために校長室に呼び出された。校長先生を中央に置き、左右に金銀の楯を胸に持った二人の写真撮影が終わった後、校長先生が言い出した。
「来賓玄関前に君たちの楯を少しの間だけ飾っておきたいのだけどいいかね?」
小学校の来賓玄関前には何かしらの大会の優勝トロフィーが硝子函に入れられている。特段理由は無く、単なる校長先生の自己顕示欲からくるものである。
二人はコクリと頷いた。
「じゃ、硝子函の鍵持ってくるから、君たちは先に来賓玄関前に行っててくれたまえ」
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