7人が本棚に入れています
本棚に追加
この後の学校はてんやわんやの一言、少年の救急車の搬送、少女の介抱、全校児童の速やかな帰宅など、大変であった。
その後、少女は保健室にて警察官によって簡易的な取り調べを受ける、少女は脳内で自分は一切関わっていないと妄想を描き、警察官に嘯くのであった。
「あたしの前を歩いてて…… そうしたら、いきなり前向きに転んでそのまま 『ずさー』って落ちて…… 大丈夫かなって、近づいたら…… 血がいっぱい出て…… わけわかんなくなって…… 校長先生が来て……」
少女はそれを涙混じりに言う。その涙は警察官をたじろがせる程に激しいものだった。しかし、事故か故意かはわからないが突き落とした可能性もゼロじゃない。
警察官は辛いながらも質問を続けた。
「お嬢ちゃん、あの子に触れたとかそういうことはない?」
やばい、このまま触ったということにされたらバレるかもしれない。ここは涙だ。少女は存在しない潔白を証明するために嘯き泣き喚くのであった。
「彼の体には触れてもいません! 本当にいきなり落ちて! 彼の五段程上にいたんですよ! 彼を押すどころか…… えぐっ…… ぐすっ…… 触れるはずもありません!」
「わかったわかった。変なこと聞いてごめんね」
少女は保健室のベッドに潜り込み、枕で涙を濡らしながら口角を上げる。やっぱり涙は絶大な効果がある。泣けば許される、人間と言うのはなんて涙に弱いのだろうか。大人も子供も、いや、人間全ては涙に弱い。涙さえ流せば全てを有耶無耶にしてなかったことに出来る。
なんて簡単いのだろうか。少女はそう思った時、唐突に楯に血は付着てないかと心配になり、ベッドのシーツで楯全体を拭った。血は付着ない。案ずるより産むが易し、杞憂だったか。
少女はホッと胸を撫で下ろす。
最初のコメントを投稿しよう!