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 バカンス-シーズンに入り、俺とミーシャはボリソヴォ湖畔の別荘で、賓客の来訪を待っていた。  約束どおり、ミハイルは加賀谷精機の代表取締役宛に招待状を送り、双方の秘書達......レヴァント側はタニアによる日程の擦り合わせがなされ、ふたりの来訪は夏の終わりに決まった。  いわく、夏の盛りの頃に大事な祭祀があるとかで、その前にしばらく潔斎を行わねばならないらしい。盂蘭盆会の三日間は、俺も邑妹とともにオヤジや崔の墓に詣でるつもりだし、その前に崔の残した学校や病院の視察や、新しい診療所の施工に立ち合わねばならない。 ー資本は出すが、管理運営はお前の仕事だ。ー  ミハイルのその言葉は俺にはかなり嬉しかった。単なるベッドの抱き枕ではなく、ひとりの男として、社会人として腕を奮わせてもらえるのだ。  俺はレヴァントの経営する病院や教育施設の視察にも同行させてもらい、色々と管理者や医師達にレクチャーも受けた。 『なかなか頑張りますね』  軽く皮肉っぽい口調ではあるが、ニコライが全面的に協力してくれるのが有り難い。  そんな一連の仕事が一息ついたところで、遥達の来訪となった。  サンクトペテルブルクの空港にはタニアとその旦那が出迎えに立ち、イリーシャが運転するリムジンでボリソヴァ湖まで来る予定になっている。 ーお前のチームの連中なら、先方の護衛にも面識があるしなー  ミハイルは、マフィア臭の強いファミリーのメンバーに桜木とかいう遥の護衛が神経を尖らせ過ぎないよう気を使ったらしい。まぁヤバさにおいては、マフィアもKGB上がりもいい勝負だと俺は思うが......。  遥達の空港到着の報告を受け、そわそわと落ち着かない俺にミーシャが少しばかり眉をひそめて、耳打ちした。 「あくまでも、商談だからな」 「わかってるよ」 「ならば落ち着け。客を出迎えるホステスというのは、もう少し優雅に落ち着いて振る舞うものだ」 「だから俺は女じゃねぇって......!」  今回はアウトドアのレクリエーションを組んでいることもあって、女装は勘弁してもらったが、出迎える時だけは薄い絹のドレープの入ったシャツブラウスに深紅のスーツという出で立ちに決まり、やはり俺としてはかなり恥ずかしい。 「男装の麗人みたいでカッコいいわ」  着付けてくれる邑妹(ユイメイ)まで、うっとりとした目で勘違いな賛辞を漏らすし.....。 「だから、俺は男だって...」  口を尖らせる俺の視線に、丘を下ってくるBMW の白いリムジンが飛び込んできた。 「来た!」  モバイルの着信が到着を知らせた。  俺はバルコニーから車体が近づいてくるのを確かめて階段を駆け降り、エントランスに迎えに走った。  
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