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さすがに……膣内の痛みまで、理人が察することなんて、土台無理な話だもの。
私が我慢して隠している限り、理人は知ることができなくても不思議じゃない。
けど、理人はそれでもそのことに気付けなかった自分を責めて後悔するの。
「ごめんなさい、理人。――私、理人に嫌われたくなくて……肝心なことをちゃんと言わずにいて……逆にあなたを傷つけちゃったね」
大好きだから察して欲しいとか、愛されているんだから分かってもらえるはずだとか、そんなのは傲慢だ。
「理人、私、今度からしんどい時はちゃんと無理って言う。だから――」
怖がって、私を求めるのをやめる、とか……言わないで欲しい。
恥ずかしくて「だから」のあとが言えない私に、理人がキスをしてくれて。
「キミが大丈夫なときは……僕に葵咲ちゃんのこと、隅から隅まで愛させてくれる?」
不安そうに揺れる理人の瞳を見て、私は小さくうなずいた。
私たち、小さい頃からずっと見知った仲なのに、まだまだ手探りで歩み寄らないといけないところが沢山あるんだね。
でも――。
そういうのをひとつずつ乗り越えながら……これからもずっとずっと一緒にいたい。
身体の向きをほんの少し変えると、私は布団が落ちるのも構わずに理人にギュッとしがみついた。そうしてほんの少し身を乗り出して、彼の耳元に唇を寄せる。
「よろしく……お願いします……」
小さな声でそうささやいた私を、理人が力強く抱きしめてくれた。
理人、私のことを愛しく思ってくれる気持ちが過ぎる余り壊してしまいそうになるあなたも、それを悔やんで泣きそうになるあなたも、みんなみんな大好きです。
理人、大好き。愛してる――!
END(2020/08/26〜8/30)
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