*心と身体は裏腹で

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「あ、んっ、理人(りひと)っ、待っ、……」  理人に求められると、どうして私の身体はこんなにも節操なしに(たかぶ)ってしまうんだろう。  本当なら――。  今日は理人にごめんなさいをするつもりだったのに。  連日連夜こんなに激しく求められたら……さすがに身体がもたないから、ごめんね。今日は休ませてねって……。  そう言って、彼をそっと抱きしめるつもりだったの。  なのに――。 「葵咲(きさき)……愛してる」  理人に耳元で甘く掠れた声で名前を呼ばれた途端、私、いつも頭の芯までぼぉっとなってしまって、彼に触れたい、触れられたいって気持ちに支配されてしまうの。  身体は「休ませて」「もう無理よ?」って悲鳴を上げているのに、心がそれを「あと1回だけなら大丈夫だと思うな?」ってねじ伏せてしまう。 「ひゃ、あ、っ」  理人の膝上にギュッと抱き上げられて、下から突き上げるように揺さぶられて、彼を受け入れた辺りに快感とは別のピリッとした痛みが走った。 「んっ、ッ……!」  思わず眉根を寄せて理人の胸元に手を付いて、彼がこれ以上深く自分の中に侵入(はい)りこまないように腰を浮かせてしまった。  目端に、抑えきれない涙がにじむ。  今まではどんなに痛くてもちゃんと我慢できてたのに。  あーん、どうしよう。  今回は絶対にバレてしまった――。  明らかにおかしな態度をとった私に、さすがに疑念を抱いたみたいに理人(りひと)の動きが止まる。 「葵咲……?」  理人が私の名前に“ちゃん”を付けるのは、私に甘えたいときと、私から本音を引き出したい時。  後者は最近加わった気がする。  恐らく理人が、私の様子を見て効果的だと判断して無意識に取り入れたんだと思う。  そうして、今回の「葵咲ちゃん」は紛れもなく後者のほうで。 「――もしかして……痛いの、我慢して……」  そう言って、理人が私の中から何の躊躇いもないみたいに彼自身を抜き去ってしまう。 「ひゃ、んっ……」  実際彼に突き上げられるのも、抽挿(ちゅうそう)を繰り返されるのも、今は痛いし辛いって感じている。  もうこれ以上は無理……って分かっているのに、思わず最後までしていないのに理人がこの行為をやめてしまうと思ったら、それが寂しいとも感じてしまって……。
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