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「私、理人に触れられたり……その……求められたりするの、嫌いじゃ……ないの。……っていうより……寧ろすごくすごく嬉しいし……好き……だったり、します……」
しどろもどろながらも、一気にそこまで言ったら、理人が感極まったみたいに「葵咲ちゃん」って呼びかけてきた。
私はその声に、くすぐったいような照れ臭いような気持ちでうなずくと、言葉を続けたの。
「だから……ね、その……い、……くても、私……その……あなたに応えたいって……思ってしまって……それで」
恥ずかしさの余り「痛くても」がハッキリと言えなくて……でも理人は私の言いたいことをちゃんと汲み取ってくれたみたいだった。
「ごめんね、葵咲ちゃん。――キミのそういう性格は嫌というほど分かっていたはずなのに……。気づいてあげられなかったのは完全に僕のミスだ。しんどい思いをさせて……本当、ごめん」
ギュッと私を抱きしめる理人の腕に力がこもる。
その身体が小さく震えているのに気付いて、私はハッとさせられた。
彼が本気で私のことを心配して、自分のせいで私がつらい思いをしてしまったと後悔しているのが伝わってきて――。
申し訳なくて悲しくなってしまった。
「……理人のせいじゃ……ない、よ?」
そもそも大好きな理人が、私を傷付けて平気なわけないのに、それに思い至れなかった私のほうが悪い。
私は、ちゃんと理人に「痛いから今日はそこに触れるの、やめて?」って言わなきゃいけなかったんじゃないの?
言わずに隠していたのは……理人に対する優しさじゃないと気がついた。
それって、ただの独り善がりだ。
理人に嫌われたくないからって……理人のためみたいに自分を偽って……結局理人を傷つけた。
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