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プロローグ
夏休みが近い ←
なんというパワーワードだろーか。
ただそれだけで盛り上がる気持ち。
もうクラス中のみんなが
なんとなく落ち着きを失っている。
授業中だというのに、
私語が飛び交いメモが宙を舞う。
窓の外は雲ひとつない空。
高校生活は早くも2年目に突入。
中学の時にしていた部活は
県大会に行けたこともあって
高校でも同じ競技を選んだんだけど、
高校に入ったら思ってた以上に凡人で
ベンチを温める事がだんだんと多くなって
そのうち足が遠のいてしまった。
ずーっと部活一本でやってきたから、
離れてしまうとすごい開放感と虚無感が
同時に襲い掛かってきてしばらく戸惑った。
朝練もないのに早く目が覚めちゃったりとか、
それまでの習慣が抜けなかったりとか。
葛藤とか焦燥感みたいなのが
四六時中ついて離れなかったんだけど、
そのうち慣れた。
これからいろんな事に
妥協したり諦めたりするのかなー
もう、何かに悩んだりとか
めんどくさーい。
ふと、日陰でゴロゴロしている猫が目に入る。
ああ、私もにゃんこになりたい。
吸い込まれそうな青空をぼんやり眺めていると、
自分の席にも小さく丸められたメモが飛んできた。
( 帰りお茶しよー♪ カナより )
カラフルなペンで書かれた
丸みを帯びたかわいい文字が
こころをくすぐる。
教室に視線を移すと、
かなり離れた席のカナと目が合った。
( おっけー♪ )
こっちを向いているカナに、
少しオーバーなくらいの
アイコンタクトを送るっ♪
私とカナが視線を交わしていると、
その真ん中辺りの席に座っていた
マリエも密談に気づいて、
何やらサラサラとノートに書いて
ページの隅っこの文字を
指でトントンと示してきた。
( 帰りどっか行くんだったら、私もー♪ )
私語が飛び交いメモが宙を舞う。
ついでに先生の一喝まで飛んだ…
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