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入ってきた所と同じような場所にたどり着いて
フェンスの鍵を開けて紅白の垂れ幕をくぐると、
パッと視界が開けて広い境内に出た。
境内の中央には五人くらいが上がれそうな
大きなやぐらが組んであって、
ふたつの太鼓がリズムよく打ち鳴らされている。
そのやぐらの周りをいろんな年齢の人達が
ぐるっと囲んで盆踊りを楽しんでいた。
「うわ、さっきより人増えてんな。
この中から見つけられっかなあ…」
「ここ、小さい時に来た事ある…
おばあちゃんと。」
「ん?」
「そこの灯籠の角に金魚すくいの屋台があって、
その向かいにりんご飴屋さんがあって。」
「そういや、子供の頃って地蔵盆みたいな
地元だけのお祭りだったよなー」
「ずっと忘れてたのに。
なんか不思議な感じ…」
「今日の浴衣の着付けもね、
お母さんにしてもらったんだけど
おばあちゃん直伝なんだって。」
「実行委員手伝って思ったんだけどさ、
形が変わっても受け継がれていってる事が
あるんだなって…祭りとか、その浴衣とか。」
「ずっと忘れてたのに思い出せたんだったら、
お盆だし逢いに来てくれたんじゃね?」
「うん…そうだといーな。」
「昔と違ってデカい祭りになってるから、
びっくりしてるかもなー」
しばらくミカ達を探してる事を忘れて、
お祭りの雰囲気に浸った。
花火もクライマックスを迎えて、
隣にいるユートの声もかき消されるような
喧騒の中で自然と距離が近くなる。
「スゲーな、今の見た!?」
「え??何ー??」
「今のやつ、高さもデカさもヤバい!」
聞こえるようにお互い耳元で話してるうちに
ふと目が合った…!
なんか吸い込まれそうな感じになって、
頭がふわふわして…
「あ…あ、そうだ!ミカ達探さないとっ///」
「お、おう。そーだった!」
慌てて移動しようとしたら、
下駄が石畳に引っかかってこけそうになった。
ユートが咄嗟に支えてくれたんだけど…
さっきより距離が近くなった!!
うわああああ///
ちょっと待ってちょっと待ってちょっと待って
「おう、ユート!
こんなとこにいたのか。」
「ああ、川合のおっちゃん。
何慌ててんだよ?」
どうしたらいいかわかんなくなってた所で、
ユートと同じ格好をした男の人が声をかけてきた。
「盆踊りのあと例の目玉企画なんだけど、
まだ参加者の数が揃ってないんだ。
ちょっと声かけ手伝ってくれるか?」
「あーそりゃマズいっすね。」
新しい企画は大成功じゃないと
なかなか次の年もやる!
って事にはならないらしい。
声かけだったら私も手伝えるかも…
「もうあんまり時間ないんだよなあ…
ってその子、ユートの知り合いか?」
「同じ学校のクラスメイトなんすけど、
一緒に来てた友達とはぐれたらしくて
探してたとこで…」
「じゃあちょうどいい!
君らふたりエントリーしないか?
ここよりやぐらの上からのが
友達も見つけやすいだろ?」
「え、いや…浴衣カップルの企画っすよね?
俺、法被姿なんすけど??」
「エントリーしやすいように
レンタル浴衣の店にも来てもらってるだろ。
すぐ着替えりゃ間に合う。」
「いや俺はいいとしてこいつにも
聞いてみないと…」
「助けると思って、頼む!
エントリーは俺がやっとくから。」
そう言うと川合のおっちゃんは
人混みの中に消えていった。
え?え?なんかいきなり
ユートとカップルの企画に
参加する事になってしまった…!
頭が追いつかないんですけどっ…///
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