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浴衣に着替えたユートは
なんだかすごく大人っぽくて…
法被姿の時はなんてゆーか、
少年っぽい感じだったのにっ。
落ち着け私っ/// …深呼吸深呼吸。
「なんかゴメンな、巻き込んじゃって…」
「いーよっ…ぜんぜん大丈夫だからっ。」
「なんつーかさ、俺なんかと出ていいのか?
その…他に好きなやつ、とかさ。」
頭がぐるぐるして上手く答えられなくて。
もう一回、ユートと手を繋いだら
何かわかるかもしれないって思って、
手を伸ばしてみたけど繋げなくて…
背中を向けているユートの浴衣の袖を、
ぎゅっと摘むので精一杯だった。
『皆さんお待たせいたしました!
今年初開催となります、
リア充大爆発SHOW〜っ☆
司会は私、Mr.kawaiと申しますっ!
よろしくどーぞー♪♪』
やぐらの上で360°のギャラリーを相手に
マイクパフォーマンスを始めたのは、
さっき声をかけてきた川合のおっちゃんだった。
少しスベろうがなんだろうが、
お構いなしに司会進行を進めていく。
『ギャラリーの皆さんは、
お配りしていたチラシのQRコードから
お祭りのサイトに飛んでいただきまして。
何番のカップルが良かったか、
ガンガン投票をお願いしまーす♪』
『では1番のカップルのおふたりっ、
やぐらに上がってきてくださーい☆
持ち時間は3分となります!』
「えっ、アピールタイムとかあんのかよ!?
なあ、どーする?止めとくか?
俺ら…つ、付き合ってるわけじゃないし///」
「ゆ、ユートがいいなら…いーよ///」
「え、いいって…どっちなんだよ??」
アピールの仕方は様々だった。
長々とどれだけ好きなのか語る人、
お互いの好きな物を当てっこする人。
5組目のカップルはエスカレート?して、
みんなの前でポッキーゲームを始めて
盛り上がり過ぎて運営が止める事態になって
会場が色めき立った。
そして最後の6組目がユートと私。
しばらくふたりして固まってしまって
会場がざわつきだした時に
ユートが司会の人からマイクを奪うと、
私を向かい合わせにして話し始めた。
「俺さ、1年の時からお前の事知ってるんだ。
グラウンドで部活やってるの見かけて…
走ってる時のフォームがすごく綺麗で、
すっげー楽しそうでさ、なんてゆーか見とれた。」
「でもいつ頃からだったか…表情が曇りはじめて、
だんだんとグラウンドで見かけなくなっていって、
後になって部活辞めたって知ってさ。
すごく残念だったけど側から見てただけの
他人だった俺に出来る事はなくて…」
「2年になって同じクラスになっても
なかなか話しかける機会がなくて。」
「仲がいいやつに囲まれてちょっとずつ
元気になっていってたから、
俺が心配する必要なんてないかって
思い始めた頃に色々あって話すようになって。」
「あ…ゴメン、長くなった。
とにかく、俺が言いたいのは…」
「なんかあった時に気軽に相談できる
ひとりに……俺はなりたい。」
「友達からでもいいんで、俺と…」
そう言うとユートは視線を落として
黙り込んでしまった。
1学期の間なんとなく感じていた
ユートとの距離感…そういう事だったんだ。
ミカやカナやマリエだけじゃなくて、
ずっと見ててくれた人が、私にはいたんだ。
急な告白にちょっとびっくりしたけど…
ユートの気持ちに、私も応えたい。
そう思ったら返事よりも先に、
ユートの手を取っていた。
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