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ありすぎて、必死に気持ちを落ち着かせる。
例のリアルは墓場まで持っていくと決めたはずなのに、こんな反応をしていては元もこもなくなってしまう。
「こんなこと、言いたくないんだけどさ──」
「だったら言わないで!」、口から出そうになるのを必死に堪えながら、彼の言葉を待つしかなかった。
「昨日、って言うかもはや今日なんだけど、こっそりあいの寝顔見ながらぼんやりしてたらさ」
相づちすら打てず、止まりそうになる呼吸をどうにか繰り返す。
「それでその時、寝言言ってて。夢でも見てたの?」
考えてから、首を横に降った。
「そっか」、呟くと、次第に表情が暗くなっていく。
「──好きな人できた?」
背もたれの上にひじを乗せると、そこで頬杖をついた。目が合い、反射的に反らしてしまった。もう、隠せそうにないと思った。けれどまだ、抗う余地がないとも限らない、とも思った。
「……どう、して?」
「俺に、なんか隠してることない?」
遠回しなこの聞き方は、今の私には結構なダメージだ。
「あいが寝てる時に手握ったら、智史って、小さい声だったけど、はっきりそう言って。もちろんそれだけで疑うとかしないけど、そのあとすぐ、タイミング良いんだか悪いんだか、電話、智史って画面に出たから、ごめん、電話に出た」
言葉が出なかった。
「あいはもう寝てるからって、そう言ったら、分かったってすぐに電話切られた」
めまいがする。ような気がした。できれば本当にめまいを起こし、そのまま倒れて過去数ヶ月分の記憶をなくしてしまいたい。
「あい」
「ごめんなさい……」
それ以上聞くのが怖かった。考えるより先に口から出た私の言葉を、どう受け止めたのかは分からないけれど、「マジか……」、そう言って大きなため息をついた。
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