魔王にだって事情がある

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 トラック。  そう、俺に必要なのはトラックだった。負け犬として生きてきた俺が一発逆転できるとしたら、トラックに轢かれ異世界転生だか異世界転移だかってヤツに賭けるしかない。  とはいえ自分から道路に跳びこむ度胸や無謀さはない。そういう無謀さや馬鹿さや蛮勇があれば逆に負け犬から自力で脱却できるかもしれない。  俺は何もアクションを起こせず惰性で生きてきた。異世界だかなんだかいう妄想を頭に満たし現実から逃避するだけの奇妙な生き物だ。    妄想で飽和した俺はどうやら注意力散漫だったらしい。けたたましいクラクションとブレーキの音が響き、獰猛な機械が俺に遅いかかろうとしていた。そう、待望のトラックだ。眼前に迫るトラックと運転席の男の硬直した顔が俺が死ぬ間際に見た最後の光景だった。  ※ ※ ※  
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