決別

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俺がわずかに顔を顰めたのがわかったのか、氷室は俺をみてニヤリと笑った。相変わらず、蒼井以外の前では嫌なやつだ。だが俺は過去に蒼井の恋人のフリをした前科があり、全く原因が俺にないとも言えない。 すると蒼井が思い出したように言った。 「あ、悠。ミスターコンの時間っていつだっけ」 「二時だよ。もうあまり時間がないし、それまでには準備しなくちゃね」 ミスターコン? 氷室が出るのだろうか。割とイメージ通りだが。この美貌だし、グランプリは堅い気がする。 「氷室がミスターコンに出るのか?」 俺が尋ねると、蒼井は少し照れ臭そうな顔をした。 「あー…、悠もなんですけど…成り行きで俺も出ることになっちゃって」 「え、蒼井がそういうのに出るの珍しいな」 「俺だって目立ちたくないんですけど、悠は俺もエントリーしないと出ないって言い張っちゃって。悠は悠で周りから出ろ出ろって言われてるから、俺へのプレッシャーもありまして」 めんどくさそうに蒼井が言うと、氷室は頭を蒼井の首筋にグリグリと擦り付けた。 「そんなこと言って、颯人だってファイナリスト残ってるじゃん」 「え、すごいな!」 「まぐれですよ! だって悠がグランプリに決まってるじゃないですか!」 無自覚の惚気だ。それを聞いて嬉しそうな顔をした氷室は蒼井の頰に軽くキスをする。 「真っ昼間からそんなに誘わないでよ。その気になっちゃうじゃん?」 「はぁ? 何言ってんだお前」 付け入る隙もない。 若干白けた視線を送っていると、後ろから声が聞こえた。 「おー、氷室。久しぶり」 「来てくれたんだ。久しぶりだね、有賀」 ん、氷室今なんて言った? ……有賀?
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