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振り返ると相変わらずの男前が立っていた。驚いている俺とは対照に、奴は俺のことを見すらしない。
「あれ遊佐先輩、有賀と知り合いなんですか」
蒼井が首を傾げる。氷室だけじゃなく、蒼井も有賀のことを知っているのか。誤算だった。
「…知り合いというか、……従兄弟だ」
「え、前に遊佐先輩従兄弟がいるって話してましたけど、有賀のことだったんですか⁉︎」
俺たちが従兄弟同士だということは氷室も知らなかったようで、目を見開いている。
「あー、そういうことか。有賀、お前の…してやまない人って…」
「それ以上は黙ってくれるか」
部分部分聞き取れない氷室の声は、有賀によって遮られた。不機嫌そうに氷室を睨む有賀に対して、氷室はニヤニヤ笑っている。
「従兄弟ってことはかなり長い付き合いでしょ? 拗らせてるねぇ、有賀君も」
「お前本当に黙れ」
蒼井と俺は二人のやりとりの意味がわからず、キョトンとしている。わからないもの同士顔を見合わせてクスリと笑った。
「じゃあ遊佐先輩、会ったばかりで申し訳ないんですけどミスターコンの準備にいきゃなきゃなんで」
「まぁちょうど従兄弟の有賀も来たところだし、お二人で好きに回ってみて?」
氷室が蒼井の肩を抱いてヒラヒラと手を振る。そのまま二人は立ち去ってしまい、俺と有賀がこの場に残された。
気まずい。
しかも何故か有賀は俺のことをジッと見つめている。
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